民主政と指導者

古代ギリシアの民主政アテネで30年間執政し,アテネに史上空前の繁栄をもたらした天才政治家ペリクレスの言。

貧しさは恥ではない。 だが,貧しさに安住することは恥である

これは努力するものを支援することこそが福祉であり,そしてもちろん個々人が現状に開き直らず,自助努力しなくてはならないのだという謂いだと考えられる。

さて,ワタクシはペリクレスを考えるとき,政治形態のアレコレについて思いを巡らせてしまう。

彼は理想的な民主政治の制度を整え,その上で民衆から支持され続けることによって執政を長期にわたって続けた。 優秀な指導者が長期安定政権を築き,優れた政治を行って,民主政アテネの繁栄はもたらされたのである。

この事実は民主政の長所を遺憾なく示しているようにみえる。 事実,多くの史観はこの一事をもって,民主政をギリシアの生んだ偉大な発明の一つとしている。 しかし,アテネペリクレスの直後,彼が完成した民主政という制度はそのままに,民主政の欠点の発露ともいえる衆愚政治に陥ってしまうのである。 そういうことを考えると,ペリクレスは民主政という仮初の熱狂が生み出した独裁政に過ぎなかったのだろうかという気がして仕方がない。 そして民主政は所詮,指導者に優秀な才能が宿っていることを祈るしかできない政体なのだろうかという疑問も同時に感じてしまうのである。